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「魂とヘルシー」事前鼎談企画 Vol.2

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写真:服部健太郎

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高橋:これは塩塚さんに限った話になってしまうかもしれないですが、歌詞に出てくる一人称について訊いてみたくて。

 

菅野:女性が書く歌詞だと、一人称が「私」だったり、「僕」を使う人も珍しくないと思っていて。ただ男性の歌詞から考えると、「俺」や「僕」は使うけど「私」を使う人はあんまりいないようなと。

 

高橋:「あたし」は言わないよな。

 

菅野:過去のインタビューを読むと、塩塚さんはあくまで歌う時の語感が良いから「僕」を使っているという事だったと思うんです。けど、何か特別な意味があって「僕」を使っているのかなと。深読みなんですが。

 

塩塚:いやー…。

 

菅野:それは女性の特権なんですかね?

 

塩塚:なんか…「私」って入りづらくないですか?

ただその事も言われて、最近は「私」の曲も…

 

高橋:「涙の行方」ですよね?

 

塩塚:あ、そうです。ありがとうございます(笑)

 

高橋:あれもすごい良い歌詞だなあと。

だから最近「私」が

多いのは、女性として

音楽をやっていきたいと

ここ数年感じていたから

変わってきたのかなって。

塩塚モエカ

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塩塚:最近は「私」っていう歌詞も増えてきて。次はそういうCDにしようと思っていたんです。あと私自身男っぽいんですよね。曲を作るときのイメージや流れる映像ってあるじゃないですか?映画を観たイメージから曲を作る事もあるんですけど、その主人公が何故か男性の事の方が多かったりします。

 

高橋:その中でその主人公の男性と自分を重ねたりしている?

 

塩塚:うーん結構無意識ですけど、ストーリーと自分の気持ちが歌詞や曲になってるような。だから最近「私」が多いのは、女性として音楽をやっていきたいとここ数年感じていたから変わってきたのかなって。今考えてみたらですけどね。やってる時は全然そんな事考えてなかった思いますけど。

 

菅野:倉内さん、「私」を使う曲ってありますか?

 

高橋:女性になりきる、みたいな事。

 

倉内:一曲だけあるかなあ。

 

高橋:なんて曲ですか?

 

倉内:この前ライブでやったんだけど、「アコースティックギターがお好き」っていう。

アコギがすっごい好きな人っているじゃん、妙に好きな人。

 

塩塚:周りにいない、そんな人(笑)

 

倉内:僕の周りにいて、アコギの話ばっかするんだよ。石指拓朗とか水野ねじとかヒラヤマタクトとか。僕そういう人好きなんだけど、もし自分が彼女だったら嫌だろうなあって(笑)それで、またアコギの話してるよ、たまには私の事見ろよみたいな、歌を作った。

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イラっとしても何とかして、

ご機嫌でいる。

それもユーモアだと思う。

ユーモアで乗り切りたい。

​倉内太

高橋:ちょっと大きな話なんですけど、音楽やり始めた時は何も考えてなかったと思うんですが、こう何かを変えたいとかそういう意識を持ってやってるところはあるのかなあって。世界を変えたいとか。

 

塩塚:何かありますか?

 

高橋:無いんですよ、俺。

 

菅野:塩塚さんの書いてる歌詞を読んでいると、最後の「天気予報」で下の世代に未来を繋げていきたい、のような事を歌っていると思うんです。アルバムの最初の曲なのに「エンディング」から始まり、未来に続く歌詞で終わるという物語や流れがあるのかなと。そこから羊文学として、下の世代に見て欲しい未来というか自分が繋げられる未来像ってありますか?

 

塩塚:私は高校生くらいの時に周りに色んな音楽を聴く知り合いがいなくて。洋楽はちょっとよく分かんないから聴かない、とか。今は時代も違うし、どういう状況なのかわからないですけど。

 

高橋:皆カッコつけて聴きそうですけどね、洋楽も。

 

塩塚:皆アイドルとか、日本のロックバンド。NICO Touches the Wallsとか。

 

高橋:ああー。

 

塩塚:私も好きだったし、他にもインディーズバンドがめちゃくちゃ好きで遠征している人達もいたりはして。趣味は人それぞれですけど、世の中には他にも面白い音楽が沢山あるよって、羊文学を通して知ってくれたらいいなとは思ってます。

 

倉内:ドアだ。すごいかっこいい。

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塩塚:自分がやりたい事はもっとコアな事だったりもするけど、そこは羊文学としてバランスをとってやっている所もあります。

 

高橋:使命みたいな?

 

塩塚:使命というか…目的くらいに思ってます。弾き語りとの住み分けって話もありましたけど、弾き語りはポップな事をやっているつもりで。全然わけわかんない事とか、自分がその時気になった事をどんどん実験してみる場でよくて。でもバンドはポップなんだけどそれだけじゃない、というのは心掛けてます。

 

高橋:その目的があるからこそ、音楽のやり方が定まってくるというのはあるんですかね。

 

塩塚:それはあるかも。

 

菅野:未来って歌詞は、世界にはもっと色んな音楽があるよってのを伝えたいって思いに繋がってるんですかね?

塩塚:そうですね。「天気予報」で言っているのは、自分が高校生の時…あの時期って辛い事って沢山あるじゃないですか?その時の事が今の自分の生きている上で基になってる事だと思っていて。まだ数年しか経ってないですけど。その時の気持ちとかを曲にして、こういう人もいるんだと聴いた人が同じ気持ちになって、元気になってくれたら良いなとは思います。言葉というより、音としてという思いの方が強いですけどね。

高橋:実はこの鼎談の大きなテーマとして「世代」というのが有りまして。

塩塚さんは今話してくれたような気持ちで音楽をやっていて、それは年を重ねていくと変わっていくと思いますか?

 

塩塚:うん、変わっていくと思います。

 

高橋:思うかあ。倉内さんは、10代20代30代、音楽との向き合い方って変わりましたか?

 

倉内:ちょっと待ってね、思い出すね。

 

一同:(笑)

 

倉内あったんだろうなあ。音楽にしがみついて、なんとかそれにすがる時期ってない?人って。

 

塩塚:しんどい時に曲聴いて、今日もいくぞって時ありました(笑)

 

高橋:何聴いてたんですか?

 

塩塚:中学校の時に辛すぎて、友達にELLEGARDENを教えてもらって。

「Mr.Feather」って曲があるんですけど。

 

高橋:懐かしい…。

 

塩塚:それ聴いて学校行ってました。あの曲がなかったら学校行けてなかった(笑)

 

高橋:それで奮い立たせて。

 

塩塚:そういう事ですか?

 

倉内:うん、僕も割とそうだったから。色んな人がいるじゃん。幻覚に悩まされてたり、鬱の人とか。死んじゃう人もいる。そういう人って結構ライブハウスに来るじゃん。

それで話たりしてさ、病院紹介したり。

 

高橋:病院紹介するんですか?

 

倉内:うん、解決しないんだけど、何も。音楽で解決したいとかも思わないけど、一瞬、何秒か、3分半だけでも何かなったら良いなと。なってたからね、僕が。だから出来るような気がする。

 

高橋:それは今、ですか?今そういう気持ちで?

 

倉内:自分がそういう時期後は、そういう捉え方になってきたかも。最初は楽しいから、好きだから、だったけど。

 

高橋:これからも変わりそうですか?変わっていくと思いますか?

 

倉内:どうでしょうね。

 

高橋:無責任に今訊いちゃってますけど(笑)

 

塩塚:変わっていくと思いますか?

 

高橋:俺は変わると思いますね。でも俺、めっちゃ変わるんで。すごい影響を受けやすいんですよね。それこそ塩塚さん位の歳の時に結構同じような事言ってました。でもずっとあるのは、音楽はあくまで選択肢として残しておきたいということ。それこそ色んな人がいるので、選択肢は沢山あった方が良いなと。そういう人たちが選び取るものとして。自分のためでもあるし、人のためにもなれば良いなという。くらいですね、今は。インタビュアーが話し始めると、回収する人がいないという(笑)

 

一同:(笑)

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高橋:それなりに歳が離れてるじゃないですか、お互い。思う所あります?

 

塩塚:思う所?(笑)

 

高橋:30歳位のバンド、とか。まあ年齢とか関係無いのかもしれないですけど。

 

塩塚:最近、音楽していない時何してるんですか?って色んな人に訊いて回っていて。

 

高橋:音楽してない時…

 

塩塚:ずっと音楽してますか?

 

高橋:いやでも、音楽に繋がる事だと思ってやっているような。

 

塩塚:映画観たりとか?

 

高橋:俺映画全然観ないんですよ。

 

塩塚:本読んだり?

 

高橋:うん、詩集読んだりとか。後は本当にどうしようもない、「水曜日のダウンタウン」とかをyoutubeでただ観るとか。

 

一同:(笑)

 

塩塚:でも私そういうの大事だなって思います。

 

高橋:マジですか?(笑)

 

塩塚:本当に最近の私のテーマがユーモアで。ユーモアを取り入れないと人間としてこの先、生き抜いて行けないと思っていて。だからパンチラインも欲しいですし。「水曜日のダウンタウン」がユーモアかわからないけど(笑)

 

倉内:ユーモアユーモア(笑)

 

塩塚:笑いが大事じゃないですか、何事も。テレビもすごく大事なんだと思います。見てこなかったから、全然。

 

高橋:倉内さんの曲の歌詞でめっちゃ好きなやつがあるんです。

 

倉内:なになに?

 

高橋:「I’ve got a pop song」の…なんか…。出来るだけ…

 

塩塚:忘れちゃった?(笑)

 

高橋正確に出てこない…。出来るだけ楽しそうにしていなさい、みたいな所あるじゃないですか?

 

倉内:僕も好きだよ、あれ。

 

一同:(笑)

 

塩塚:共感し合った(笑)

 

高橋:でも孤独でいなさい、みたいな。

 

倉内「深く悲しみなさい、でも皆の前に出て行く時はできるだけくだらない感じでやりなさい」

 

高橋:そうです!俺、ダメじゃん。

 

倉内:長いね、ごめんね。

 

高橋:(笑)俺も本当にそうなりたいって思いながらいるんですけど…。結局、こんな感じなんですよねえ。ユーモアみたいなのは…。すげえ真面目になっちゃうんですよね。

 

塩塚:私もそうなんですよね。普通に喋ってる時とかもそうで。だから、研究しましょう(笑)

 

高橋:ユーモア研究(笑)

 

倉内:そっか、もっとふざけたらよかった。ふざけたバージョンやる?

 

一同:(笑)

 

塩塚:今からやり直しますか、ふざけたバージョン(笑)

 

倉内:おっす!から始まる。

 

高橋:別録りで(笑)

 

倉内:そうだよね。ユーモア。

 

高橋:そうなんですよ。それこそweezerも面白いじゃないですかなんかあの人達も。本当は、ああなりたかったんだけどなあ。なんか、育ちがね…。育ちが良かったのかな。

 

倉内:高橋ちゃんの育ちが?

 

高橋:嘘です(笑)嘘ですけど、わかります、ユーモア。

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塩塚:倉内さんはユーモアについてどうお考えですか?

 

倉内:やっぱりイライラしたりするじゃないですか?バンドとかでも仲良い人でやってるはずなのに、なんかだんだん「こいつムカつくわ」みたいになる。そういう時に一個自分の中で決めたのは、いつでもやっぱりご機嫌でいなきゃいけない。何があってもご機嫌でいるべきだ、みたいな。ちょっとイラっとしても何とかして、ご機嫌でいる。それもユーモアだと思う。ユーモアで乗り切りたい。

 

塩塚:すごい、それ。

 

倉内:ユーモアでしか乗り切れないんだよ、多分。

 

塩塚:そうなんですよね。

 

倉内:こうやって怒ったってさ、関係性が拗れたりするし。ユーモアが一番。

 

高橋:松っちゃんも言ってましたそれ。

 

倉内:松っちゃんも言ってた!?

 

高橋:怒る時は語尾に「ケロ」をつけろみたいな。

 

倉内:そうそう!

 

高橋:喧嘩とか本当に怒ってる時にこそ、ふざけろみたいな。

 

倉内:本当にそうだよね。

 

塩塚:全然違う話になって、すみません(笑)

 

高橋:「魂とヘルシーとユーモア」ってタイトルにしたいな。

 

菅野:本当ね。

 

高橋:「魂とヘルシー」ってのも、その二つを共存させたいってのがあるんですよ。

 

倉内:どういう事?

 

高橋:…どういう事なんでしょうね。

 

一同:(笑)

 

塩塚:健康的に生きたいって事?

 

高橋:そう。健康的にって、こうイメージでしかないですけど、「魂」と「健康的である事」ってぶつかっちゃうというか。そういうイメージなんです。

 

倉内:へえー。

 

菅野:ソウルフルとかって「魂」と「健康」が同じ意味で使われてそうだけど。

 

高橋:それこそ倉内さんの歌詞じゃないですけど、こうずーんと落ち込んだ所からしか「魂」を発揮できないというか…。………ぜんっぜん説明出来ない!

 

一同:(笑)

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高橋:すごい健康でハッピーだと何も生まれなくて、曲も作らないだろうし。

 

倉内:なるほどねえ。「ドラッグ・セックス・ロックンロール」の「魂・ヘルシー・ユーモア」なんだ。

 

高橋:そうです!それが一緒になってたら良いよねっていう。ユーモアも一緒になっちゃった。

 

一同:(笑)

 

塩塚:でも暗い所からって、同じような物しか生まれないと思いませんか?大体皆同じような物を作るけど、ユーモアがある人の所からは「え、こんな事出来るの?」みたいなものが生まれるのがすごく面白くて。だからそれが課題だなって思う。暗い感覚の人だともう音もグワアーってなって、ゆっくりになって。

 

高橋:(笑)

 

塩塚:全然それでも良いし、色んな人の支えになると思うけど。もっと幅が欲しいと思った時に、ユーモア。だから健康的って事です。ユーモアまでいかなくても、自分が幸せであるとか。

 

高橋:ユーモア鼎談、でしたね。今日勉強になりました。

 

塩塚:「魂とヘルシーとユーモア」

(倉内さんが手拭きナプキンで作った立体物を指差し)これ雪だるまですか?

 

倉内:そう!紳士。

 

塩塚:これですよ、ユーモア!

 

高橋:そうなんだよなあ。3月9日は「魂とヘルシーとユーモア」で!

 

塩塚:そうですね。

 

高橋:それぞれの思うユーモアで。

 

塩塚:もうユーモアだけで(笑)

 

倉内:それボケた方が良いって事?

 

高橋:滲み出たら良いかなと(笑)

 

倉内:腕毛ボーボーの何かを着けて。今日腕毛濃いなあみたいな。

 

塩塚:私もどっかに着けようかな(笑)

 

高橋:なんで皆、毛になっちゃうんですか(笑)当日、そんなユーモアが垣間見える事を楽しみにしております。ありがとうございました!

Profile

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倉内 太

1983年埼玉県生まれ。 小学5年生の時にアコースティック・ギターをやり始め、地元でビートルズのコピー・バンドに参加。 リズム・ギターを担当する。

2005年、ロックバンド・ヨーコ(後のヨーコヨーコ)を結成。2008年、倉庫内作業員のアルバイトに採用されたことがきっかけとなり、意欲的に楽曲制作に取り組む。 弾き語りのライヴ活動を始める。

2012年9月、ディスクユニオン限定フル・ヴォリューム・シングル『LIKE A RYTHEM GUITAR」発表。2012年11月、"倉内太と彼のクラスメイト"名義でファースト・アルバム『くりかえして そうなる』を発表。2013年5月、セカンド・アルバム『刺繍』をリリース。また同年4月には三浦直之(ロロ)監督による映画「ダンスナンバー 時をかける少女」の音楽を担当。倉内太と柴田聡子のデュオ=CHECK YOUR MOMの活動もはじめる。

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塩塚モエカ: 羊文学、Vo/Gt。

2012年、5人組コピーバンドとして結成。受験のための活動休止と数回のメンバーチェンジを経て、17年2月に現在のメンバーとなる。東京都、下北沢を中心に活動。多くの音楽から影響をうけた重厚なバンドサウンドと、意思のある歌声が特徴的なオルタナティヴロックバンド。

2016年 Shimokitazawa Sound Cruising、FUJI ROCK FESTIVAL ROOKIE A GO-GO出演、2017年10月にデビューEP「トンネルを抜けたら」リリース。

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2019年3月9日(土)paionia企画「魂とヘルシー 第六回」 w) 倉内太 / 羊文学

日程:2019年3月9日(土)
会場:下北沢GARAGE
時間:open/start 18:00/18:30
チケット:adv / ¥2800    door / ¥3300

※Live Pocketで発売中!

※バンド予約も受付中!

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