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20代とは、 30代とは

​――「魂とヘルシー」事前企画 ​――

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paionia「魂とヘルシー」特設ページ

Photographs by KENTARO HATTORI

paionia×有馬和樹(おとぎ話)

様々なバンドをゲストに迎えて、paioniaが企画するライブイベント「魂とヘルシー」。イベントに合わせ、行われる特別企画。おとぎ話の有馬氏を迎え、有馬と菅野の大学時代の共通の知人でもあるユームラウトのニシムラウト氏(以下ニシムラ)を聞き手に行われる、3人の音楽を巡る特別鼎談。

「あ、いける」って

  思ったらその場で

  ​作るもん。

ニシムラ来たる129日、paionia企画「魂とヘルシー」が行われます。

それに先立ち、ゲストとして出演するおとぎ話の有馬さん(Vo.)を迎え、私ユームラウトの西村も間に入りながら、話を聴かせてもらいます。

自分の説明を少しすると、おとぎ話はメンバー全員が大学のサークルの先輩にあたります。paioniaの菅野くんは同大学の2学年後輩で、一時期ユームラウトでもサポートでベースを弾いてもらってました。

 

菅野2012年に僕らは最初のミニアルバムをU.K. PROJECTから出して、そのレコ発企画(「魂とヘルシー 第二回」)で、おとぎ話に出てもらいましたよね。

 

ニシムラユームラウトでも、2014にアルバムのレコ発を東京と大阪でやって、東京編にはおとぎ話、大阪編にはpaioniaをそれぞれ呼んだよね。早速今日のテーマですが、paionia2人が今年で30歳になるという事で、「20代とは何だったのか」という話などを聞いていければと思います。

高橋12月に30歳になるんです。菅野はもうなりましたが。

 

有馬何か変わりそう?

 

菅野あんま変わらないな。あ、身体壊しやすくなった(笑)深夜作業とか、無理効かなくなってきたというか。曲作ったりって、そういう時間帯になるので。

 

高橋ああ、確かに。有馬さんはいつ作曲するんですか?

有馬まちまち。作りたい時に作っていく感じ。「あ、いける」って思ったらその場で作るもん。夜中も朝も、ツアー中のホテルで作る時もあるし。作る時間は決めてない。「作る!」っていうスイッチは入れるけどね。自分なりの。

 

高橋ふわっと作る時はないんですか?

  

有馬ふわっとはないかな。そういう風に作ると、曲の中身もふわっとしちゃうからね。

  

高橋俺らは2人とも曲を作るんですけど、有馬さんよりペースが全然遅いと思う。

  

有馬俺は早い方だと思う。一週間に1曲とか決めてるわけじゃないけど、作る時はめちゃくちゃ作るって感じかな。それは、バンド始めた時から変わってないよ。作らないときは作らない。ルーティーンもないし、普通に生活をして、作りたい時に作るって感じかな。

 

高橋最初からずっとそうなんですね。

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有馬20代になって、自分って何なのか色々考えるようになって、どんどん自分ていうものが分かってきた感じはあるかな。20代は自分なんか無いんだよね、どう見積っても。30代に入っても自分が何なのか結局分からないままなんだけど、今37歳になって、やっと自分が何が好きで何が嫌いかが分かってきた。写真を撮ってもらう時に自分がどう映ればいいのかとか、そういうのもはっきりしてきた。30代になって、やっと戦い方みたいなものが分かってきたかな。曲作りに関しても自信も出来てきて、周りの人の意見とか気にしなくなってきた。

 

高橋妙な自信を持って作曲をするところも、20代なのかなって思います。

 

有馬そっか。音楽に限らず、俺は人間として自信を持って生きてきた事があんまりないから、今になってやっと自分ってものが分かってきたって感じるんだよね。

 

菅野何が好きで何が嫌いかって事があやふやだった20代の頃は、音楽を作るモチベーションみたいなものってどこにあったんですか?

 

有馬たぶんね、承認欲求ではないけど、褒められたかったのかなって感じがする。それがあったから、バンドをはじめていろんな人に聴いてもらって嬉しいって事はあったんだけど、30代になったばかりの頃はわかってなかった。うちのバンドはずっと仲が良いってわけじゃなくて、すごい喧嘩してた時期もあって、必死だった。全然自分を省みる事も出来てなかったし、バンドの事で一生懸命だったから、周りも見えてなくて、切磋琢磨してといえばそうなんだけど。だから、音楽のモチベーションは何だったのかって考えるのは、難しいな。なんか「キラキラさせたい」とか「ロックバンドをやってる」っていう風に自分が思いたい。けどロックっぽい事を言うんじゃなくて、みんなが分かってくれる事を言いたいとか、そういうざっくりとした気持ちはあった。今は逆で、自分が好きなものをもっともっと追及して、それをとにかく発表していきたいって感じになってきたかな。

やっと自分が何が

好きで何が嫌いか

​わかってきた

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高橋自分は20代の頃の方が好き嫌いが結構極端で、歳と共にそこの境目は曖昧になってきました。最近は色々聴いてみて「こういう音楽も良いのかな」とか感じるようになってきたんですが。有馬さんはそこがはっきりしてきたんですね。

 

有馬はっきりしてきたというか、俺は多分音楽をやってる他の人らより音楽が好きで、若い頃は先輩が多かったから「これ良いよ」って薦めてもらったものは全部聴いて、そういう意味で今より間口が広かった感じがする。今も何でも聴くんだけど、聴きたくないものは聴かなくなってきた。

 

高橋今も弟さんとレコードを探しにディスクユニオンをハシゴするんですよね。

 

有馬するね。

 

高橋好みがはっきりしてきた今、どういう観点でレコードを探すんですか?

 

有馬どういう観点…聴いた事ないやつ聴きたいからレコード屋に行くのよ。

 

高橋試聴はしますか?

 

有馬試聴は絶対しない。間違えてもいいもん。音楽が好きだから、良くないものを買ったとしても、別にいい。

 

高橋なるほど。

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30歳になった時に、

節目っていうのは

​あった気がする

菅野30代に入って感じた変化って、他にありますか?

 

有馬そもそも、大学行く前に親父から「やりたい事やってもいいけど、30歳で芽が出なかったらやめろ」って言われてたから、結構俺は引き際とか考えてたのね。だから、言ったことなかったけど30代に差し掛かる頃は、やっぱりやめようって思ってたもん。意地で続けてるって思われてもしょうがないから。

 

高橋:それって、おとぎ話のアルバムでいうとどの時期ですか?

 

菅野BIG BANG ATTACK」(5th ALBUM) の頃ですよね。

 

有馬:そうそう。

 

菅野あのアルバムって、3.11の震災直後にレコーディングが始まってますよね。

 

有馬:そうだね。だからあの後、仙台に呼んでもらってライブをしたり、電気が使えない中、大阪でライブをした時にすごい喜んでくれる人たちがいたんだよね。だから、俺親父に電話したもん。「もうちょっとだけ(バンドを)続けます」って。30歳になった時に、節目っていうのは俺はあった感じがする。

 

菅野言い方が変かもしれないけど、震災が音楽を続ける後押しにもなったのかもしれないですね。

 

有馬:後押しは多分あったと思う。人の役に立つ事をしてるのかもしれないと思った、あの時は。けど、その後メンバーと喧嘩したり色々とあるんだけど。でも、いまだに「このバンドをずっと続けるんだろうな」っていう安心感みたいなのは無いかな。バンドっていっても民主主義だから、それぞれが努力してない限りは続ける意味がない。1人だけが努力してても、やっててキツいから。

そういう意味でも、30代ぐらいになると、自分が何をすべきかが分かってきたし、他のメンバーにも何をしてほしいかも言えるようになってきた。前は一番やる気があったのが俺で、他のみんなは何をしたらいいか分からなかったんだと思う。俺が一番前に立って、メンバーよりも歩く速度が速くて。曲を作るのが俺だから当たり前なんだけど、その速さをみんなに押し付けてたのかもしれない。最近はそれぞれが頑張るようになったんじゃないかなって思う。

高橋:バンド内で話合いってよくしますか?

 

有馬:おとぎ話はめちゃくちゃするよ。他のバンドよりとことんやってると思う。やっぱね、なあなあはダメだよ、経験者としては。なあなあで出来る人もいると思うけど。

 

高橋:そうですよね…。

 

ニシムラ:有馬さんの頭の中に絵があるからじゃないですか。やりたいことがはっきりしてるというか。

 

有馬:それはそうだね。やりたい音楽ははっきりしてるかな。最初の3枚のアルバムの頃は、まだはっきりしてなかったかも。人の意見もちゃんと取り入れてやろうと思ってたから。でも人間ってそれぞれに器があって、自分に見合った事だけやってればちゃんと成長もすると思うんだけど、それが難しくて。うちらがライブを始めた頃は青春パンクの隆盛が一旦終わって、アイデンティティをどうやって確立させれば良いのか分からなかったし。

 

ニシムラU.F.O. CLUBで上裸でスピーカーの上に乗っかってましたよね。

 

有馬:それは、銀杏BOYZが流行ってて、おとぎ話もデモテープ聴いてもらったりして、その流れに乗ろうと頑張ったんだよね。でも本当にやりたい事なのかわからない時期だった。でも今やってないって事は、やっぱりやりたい事ではなかったんだと思う。だけど確実に意味はあった。

20代はそういう意味で必死だった。で、男って歳をとればとるほどかっこ良くなっていくと思うんだよ。背中で語るっていうかさ。いろんなものに興味を持っていろんなものに自信を持ってるおっさんて格好良いじゃん。だから20代の頃作った曲は好きだよ。その時一生懸命作った曲だから。20代の後半から30代の始めの頃は、昔のアルバムを聴いても辛くてしょうがなかったけど、今は全然大丈夫って感じ。

 

高橋:辛いっていうのはどういう事ですか?

 

有馬:何がやりたかったのか、分からなかったんだよ。どこかのシーンにいたいと思ってたけど、自分が果たして何を表現したかったのかも分からなかった。他のバンドの人たちよりも、俺は曖昧だったと思う。でも、その曖昧だったのが今になって強みになってるかもしれない。昔の曲をやると、今の曲とマッチングした時に面白い事が起こるから、続けてると面白いなって思う。30代になってそういう楽しさを感じる事がすごい増えたかな。奥田民生がすごい好きで、ソロになった時に「29」ってアルバムを出して、その1年後に「30」っていうアルバムを出すんだよ。年齢にかこつけてアルバムを作ったんだと思うけど、たまにその2枚を聴くと、面白い事を言ってるんだよね。せっかく曲を作るんだったら、年齢に絡めて1曲でも作れば、振り返った時に面白いかもね。

 

ニシムラ去年がおとぎ話の10周年でしたよね。何か感慨みたいなものはありましたか?

 

有馬:無いかな。あれは自己肯定をしたかっただけ。

 

高橋:僕らも今年で結成10周年ですね。

 

有馬:俺たちはアルバムを出してから10周年って感じだね。

年齢に絡めて1曲でも

作れば、振り返った

時に面白いかもね。

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菅野:バンド自体は18年目ですよね。

 

有馬:そうそう。大学で風間くん(Ba.)と初めて出会って好きな音楽が一緒で、サークルで俺のライブを観て楽器を始めたって聞いたら、一緒にやりたいって思うじゃん。それで初めて組んだバンドがおとぎ話。だから、俺か風間くんのどちらかが努力しなくなったら、もうやめたいって感じ。そこだけは意地があるかもしれない。お互いが何か諦めたり、なあなあの事をするようになったら、はっきり言ってダサい。2人がそこでバチバチやってるから、若いお客さんもいるんだと思う。1回でも売れたらどうなるか分からないけど、おとぎ話はピークがまだ来てないから、新曲が若い子とかに良いって言ってもらえるのは、今でもヒリヒリしてるからなんだと思う。たぶん、怒るのとか揉めるのとかがみんな嫌だから、多少の嫌な事には目をつぶってるはずなんだよ。37歳にもなると特にね。でもおとぎ話はそこは全然目をつぶらないから。俺なんかガンガン言うからね。それを聞いてくれて、各々努力してくれてる。一番言う事を聞いてくれないのは風間くんだもん(笑)

前ちゃん(Dr.)とか牛尾(Gt.)は、格好良いからさ、佇まいも。あんだけ格好いい人がバンドにいるっていうのは、どっかでギスギス出来てるっていうこと。本気なんだよね。

有馬paioniaはさ、最初にデビューした時の音源も聴いてたし、今の音源も聴いたけど、今の方が全然良いよ。一時期全然リリースしてなかったじゃん?それが、すごい良い状態にしてくれたんだと思う。今の方が、言葉が薄っぺらくなくなった気がする。もともと割と重たいバンドなのに、楽器の響きとかの方が先に立ってるようなアレンジになってたから。今は訥々とやってるから、逆に新しく聞こえるんだよね。

 

高橋:本心で、今が一番良いって感じてるから、まだまだやれるなって思いますね。

 

有馬:それが楽しくなっていけば良いじゃん。

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