アルバムを1曲目から聴いた。頭の中に世界が広がった。それはなんか、ジブリに出てくるような夢の中の街みたいなところで、街のいたる所がぼんやり光っていて、行き交う人たちは歩いているような、浮かんでいるような感じで。その路地にひとつ、あやしげなお店がある。そこに入ると、店内には何に使うのか見当もつかない、不思議な道具や機械がたくさん並んでいて。そしてその一番目立つところに置いてある、ひとつの大きな木製の箱。表面には精巧な装飾が施されている。そしてその箱の中身は覗けるようになっているのだけど、そこには大小無数の歯車やバネ、きれいな宝石たちが信じられない精度で組まれていて。でもやはり、この箱が何の機能を持っていて、何のために使われるのかは分からない。ただ、これは大切なもので、この世界の何か大事なことのために機能するということだけは、感じ取れる。 なんてイメージが、10曲目まで聴いていく中でぶわーっと脳内に広がって。夢を見てるみたいだった。芸術作品、こんな言葉にすると陳腐になるのかもしれないけれど、でも僕は、そう感じた。 それから11曲目の『跡形』を聴いたんだ。イントロから、あ、世界が変わった、って思った。夢の世界から現実に戻ったって思った。で、気付いたら僕は涙を流していた。僕には、それまでの精密に作り込まれた芸術のような楽曲群から、この『跡形』と次のラスト曲『フォークソング』はまた別の世界にあるように思えた。朝目覚め、ぼんやりしたまま、ふと今までずっと思っていたことを、自分でもはっきり分かっていなかった本当に思っていたことを、するりと言ってしまった。そして泣いてしまった。そんな瞬間を歌にしたかのような。 以上が、僕が12曲を通して体験したこと。アルバムを通して聴くことって、1時間も人生の時間を奪うわけだから、すごい体験をしたいよね。僕はこんな体験をしました。素直に、あなたにこのアルバムを勧めたいと思う。

 

柴田隆浩(忘れらんねえよ)

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